何に対してbetterなのか [技術英語]
易しい話題ですが、下訳で間違っていたため、ボーっとしていると誤訳するのではないかと思った文です。
The equipment shall be insulated for Class Z temperature per IEEE Standard X or better.
下訳では、「この装置に、IEEE Standard XによるClass Z温度またはさらに良い温度に備えた断熱措置を施すこと」
となっていました。
もっと良い温度って何?と思い、少し吟味しました。
このbetterはClass Z temperatureではなくinsulatedを修飾していることが分かります。
そこで、
「この装置に、IEEE Standard Xに記載のClass Z温度に備えた断熱、またはこれより良い断熱措置を施すこと。」
などと訳しました。
はじめまして。突拍子もないハンドル名で失礼します。
お話の本筋からは外れるのですが、「もしくは」の使い方について一言。
とくに法律関係の分野での話になりますが、「または」と「もしくは」は厳密に使い分けなければなりません。
「もしくは」が使われるのは次のような状態に限られます。
A or B, or C, D or E
つまり次のような接続の場合です。
[A or B], or [C, D or E]
[A or B] と [C, D or E] の or (= 小さい区切り) は 「もしくは」とし、[A or B] と[C, D or E] との間にある or (= 大きい区切り) は「または」とします。
今回のお話は技術分野のものなので、ここまでの厳密さは必要ないと思います。でもきちんとした使い分けができれば、読む側も「むむ、こいつ分かって書いてるな」と思うのではないでしょうか。
by レッサーパンダ塚原 (2006-07-05 09:17)
レッサーパンダ塚原さん、初めまして。
「または」「もしくは」については、確かに仰るとおりですね。
ただ、法律用語と一般用語は違う意味合いの事が多いので、そこ(知っているだろう)をあまり期待すると思わぬ誤解を招くかも知れませんね。
例えば「善意」「悪意」などは、一般人には法律用語の意味で使う人は少ないでしょう。
この辺り、「業界用語を使うか、もっと一般的な言葉に直すか?」、などと同じくセンスが必要かも知れませんね。
by Take (2006-07-05 15:11)
Take さんはじめまして。
法律用語でない「または」と「もしくは」 (ついでに「あるいは」) には微妙な意味の違いがあると聞いたことがあります。
ご存じでしたら教えていただけませんか。
by レッサーパンダ塚原 (2006-07-05 21:27)
レッサーパンダ塚原様、Take様、コメントありがとうございます。
またはともしくはは違うということはうっすら記憶にあったのですが、不明なまま何となく見過ごしてきました。コメントをいただいてから調べて、アルクのホームページに、契約書翻訳の定石みたいな形で載っているのを発見しました。ブログ本文を訂正しました。冷や冷やです。
by oceanbridge (2006-07-05 22:08)
oceanbridgeさん、はじめまして。
技術翻訳に興味があって、勉強中の者です。
oceanbridgeさんのblogはとても参考になります。
ところで、Class Zが温度のランク付けだとすると、
betterはClassを修飾しているという可能性はないでしょうか?
「…… Class Z温度、または、その上のClassの温度に備えた断熱を施すこと。」
技術に疎いので、見当違いだったらすみません。
by Hanna (2006-07-05 22:43)
Hanna様、はじめまして。ブログを読んでいただいてありがとうございます。
Classを修飾しているのなら、higherまたはworseかなと思いました。とはいえ、結局、Hannna様の書かれた訳も私の訳も、内容は同じですね。「絶縁」と書いてしまってましたが、断熱、ですね。本文を書き換えました。ありがとうございます。
by oceanbridge (2006-07-05 23:06)
レッサーパンダ塚原さん、純粋な日本語としての「または」「もしくは」については詳しい知識はありません。
一時期法律関係の勉強をしたときに、両者の違いを教わった時になるほどと思ったものですが、さて一般の人がそれほど明確な違いを認識しているだろうか?と言う単純な疑問があるので、法律関係の用語(に限らず業界用語)をそのまま一般向けに使うと、誤解されるかも知れないなと言う個人的感想を書きました。
by Take (2006-07-05 23:19)